エシカルなひと、もの、ことインタビュー< ときの森 さん>
自然栽培を多くの人に知ってほしい!気軽に遊びに来れる公園のような畑です。
札幌の東米里で自然栽培を行う「 ときの森 」のくにちゃん(西山 邦宏)、みずきさん(葛巻 瑞樹)(右)、まこみん(藤原 まこ美)(左)にインタビュー。
息子の病気がきっかけで農家を目指そうと決意
―2017年で就農3年目という、ときの森さん。自然栽培で農業を行っていますが、きっかけは
くにちゃん「息子が甲状腺の病気になったのがきっかけで、農家を目指そうと思いました。」
―すごい決意ですね!その前は全然違う仕事をされていたのですか?
くにちゃん「車屋さんでした。取締役部長だったこともあり、辞める時には周りからかなり反対されましたね。親には特に反対されて、辞めるのに半年かかりました。」
―そうですよね。役職のある仕事を辞めて全く異なる分野に挑戦するというのは、かなり勇気がいることですよね…。
くにちゃん「妻の支えがあって、農家になれました。周りからもいい奥さんだねと言われます(笑)」
―その後、さまざまな農家で研修を受けたのですね。
くにちゃん「最初は自然栽培という言葉も知らず、有機栽培をしようと思って、長沼の無農薬・無化学肥料の農家で研修しました。その後、長沼で一緒だった方から岩見沢の『稲葉ファーム』さんを教えてもらい、自分にとって自然栽培の原点となりました。看板に『MOA』と書いてあって、その当時は知らなかったんですが、岡田茂吉さんが提唱する自然栽培のことだったんですよね。それに興味を持って。自然栽培は、単に無農薬・無化学肥料というだけでなく、自家採種(自分の畑で種を採る)することもそうですが、自然尊重の考え方が何より大事で、正解があるものではない深いものなんだと知りました。」
自然栽培は、方法ではなく、自然を尊重する「生き方」
―それから自然栽培を始めようと思ったのですね。
くにちゃん「その後、自然栽培の研修先を探していたときに、北海道アルバイト情報社さん(農業のフリーペーパー『いいね!農スタイル』を発行している)からファーム伊達家さんを紹介して頂きました。実は、伊達さんには一度断られているんですよね。まだ研修生を受け入れたことがなく、研修制度が整っていないからということで。それでも、他の方からも伊達さんを紹介してもらったこともあり、もう一度『お手伝いさせてください』と頼んだら、『家族で遊びに来てください』と言ってもらえて。実際に行ったらその後すぐに研修生として受け入れていただけることになったんです。」
―印象的なエピソードですね。
くにちゃん「家族を大事にされる方ですからね。家族で遊ぶ姿を見て判断したかったという思いもあったのかもしれません」
―ファーム伊達家さんでの研修はいかがでしたか
くにちゃん「実際、あんな良い研修先ないと思います。こうしてという指示とかはなく、何を学びたいかを聞いてくれました。真面目で几帳面なところも自分と違う部分なのですごく勉強になりました。伊達さんには、栽培法というよりも、生き方、自然尊重の考え方を学びましたね。」
―自然栽培は、方法ではなく、自然を尊重する生き方そのものなのですね。
くにちゃん「東京にも研修に行き、ナチュラル・ハーモニーの高橋さんにも話を聞いたのですが、4時間ずっと『生き方』を教えてもらいました」
スタッフ3人が揃って本当の、ときの「森」に。主体的に楽しみながら働いています
―そして、念願の新規就農。1年目はやはり大変でしたか?
くにちゃん「学んだ通りにいかないことがほとんど。自然栽培にはこれが正しいってことがないから、やってみて良かったことは更に増やして、悪かったところは変えての繰り返しです。何回も失敗しながらやっています。研修先とは土も気候も周りの環境も違いますからね。」
―2年目にはみずきさんがスタッフとして入ったということですが、みずきさんのきっかけは
くにちゃん「実は長沼の農家での研修時代から一緒で。その頃も『いつか一緒にやれたらいいね』と話してたんですよね。それがまさか現実になるとは。」
みずきさん「しばらく会っていなかったのですが、私も札幌に戻ってきて子育てをしていて、畑に遊びに行きました。そのころ、スーパーでパートをしていたのですが、もともと農業がやりたかったので『お金より畑で働きたいな』とちょっと言ったら、誘っていただいて。今はここで念願の農業ができています」
―もともとのご縁があったのですね!
くにちゃん「ご縁で生きています。ご縁が一番ですね。」
―そして3年目からはまこみんが入りました。きっかけは
まこみん「もともと農業をやっていたのですが、娘がアトピーになり、大規模農業をやめて別の有機農家で働き始めました。ですが、私が病気になってしまって…。農業をやめようか迷っていたんですよね。そんな時に、ときの森に遊びに来て『ここで働きたい!』って強く思ったんです。そうしたら快く受け入れてくれました。」
くにちゃん「入る前は顔色が悪かったよね(笑)」
まこみん「でも入ってから元気になったとみんなに言われます」
くにちゃん「露地の野菜はスタッフ2人がメインで担当してくれてます。何を育ててるかわからなくなるくらい(笑)2人に任せています。その方がやりがいを感じられると思って。気づいたことはお互いに何でも言い合っていますね。3人になったので、3人の木が集まって、これで本当にときの『森』になりました。」
―実際、働いてみてどうですか?
みずきさん「肉体的な辛さはあるけど、それ以外は楽しいです」
まこみん「辛いところは何もないですね」
くにちゃん「本当!?(笑)」
―スタッフそれぞれが主体的に楽しんで育てているからこそ、農産物も元気に育ちそうですね。種類もかなり豊富ですね。
くにちゃん「今年からハーブガーデンもできて、ハーブの先生に監修してもらっています。しっかり育つのは2~3年後かなと思っています。そして、まこみんの大好きな豆も増えています。実は今年、江別にも『ぽへぽへ畑ときの森』という豆メインの畑ができました。あとは、今年から綿花の栽培も始めました。」
―オーガニックコットンですね!
くにちゃん「オーガニックコットンは増えてきているけど、市販のものを買っても作る工程の中で薬品を使っていたりするので、本当に身体や環境に良いとは言えないんですよね。だから手織りで布製品ができたら本当にいいものができると思います。」
―本当にさまざまな種類を育てていますね。
くにちゃん「直観を大事に、まずはやってみる!という考えでやっています」
公園のような畑を目指しています。どんな方でも気軽に遊びに来てほしい
―ときの森さんにはたくさんの方が遊びに来るみたいですね。
くにちゃん「来てもらえる農園、公園のような畑を目指しています。だから札幌市内にしたっていうのもあるんですよね。身近に感じてもらいたいと思って。実際、いろんな人が遊びに来ます。」
まこみん「ブランコ乗りにきたり、手伝ってくれたり、くにちゃんに会いに来たり…。本当にたくさんの方が来てくれています。」
くにちゃん「あと、車いすの方も通れるように、道を広くしています。健康な方も、そうでない方もここに来て癒されて帰ってほしい。」
まこみん「来た時暗くても、帰る時笑顔だと嬉しいです。」
くにちゃん「まこみんも、最初そうだったもんね(笑)」
―ときの森さんは、農業だけでなく干し野菜や野菜パウダーなどの加工も行っていますね。他農園の野菜まで加工しているのは珍しいですよね。
くにちゃん「自然栽培を知ってもらいたいという気持ちでやっています。他の農家さんの野菜でも知ってもらえたら嬉しいです。あとは、自分たちが冬も『食』を仕事にしていきたいという想いがあるので、冬の間メインにできる加工は今後も増やしていきたいですね。干し野菜は人気で、保存ができるので高齢の方にも好評ですし、災害などの際に保存食としても使えると思います。野菜パウダーも最近販売開始しました。今後は、冬に加工野菜を使った料理教室やワークショップをスタッフ2人にお願いしてやっていきたいと思っています。そうしたら冬の間もここで働けるし、加工野菜の活用の幅も広げられると思うので。」
―楽しみですね。イベントも頻繁に出られていますね
くにちゃん「そうですね、毎週出店しています。他の自然栽培農家さんの野菜も扱って八百屋をやりたいなとも思っています。とにかくいいものを奨めたいんですよ。世の中は、添加物だらけで、知らないで食べている人が多すぎる。だから、知るきっかけを作りたいんです。最初から全部を変えるのはムリでも少しずつ変えるきっかけになったらと思います」
―生産から加工、販売まで幅広いですね!「農家」という枠を超えた新しいスタイルですね。
くにちゃん「今後は畑も増える予定です。あとは、いずれ畑の中に保育園を作りたいと思っています。これは農家をやる前から考えていたことなんです。栃木県に畑とレストランと保育園が一緒になっているところ(『創造の森』)があると聞いて、妻も保育士だし、これこそ実現したいなと思っています。そして将来的には、障がいのある方も一緒に働けるような場所にしたい。」
―素敵ですね。実現が楽しみです。
幸せとは
―最後に、みなさんにとって幸せとは
くにちゃん「今が幸せ。みんなが笑顔でいられることですね」
みずきさん「おいしいものを食べて寝ること」
まこみん「何も考えなくてもいい状態」
ときの森
「とき」を大切にする想いを込めて、自然栽培で野菜の生産、加工、販売を行っています
住所:札幌市白石区東米里2092番地3
WEB:facebook「ときの森」
※ときの森の野菜や加工品は、直接農家で及びイベントで購入できます。配達要相談。
イベント情報など最新情報はfacebookでご確認ください。
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