エシカルなひと、もの、ことインタビュー< ファーム伊達家 さん>
札幌で、自然栽培・自家採種・地域で支え合う農業に取り組んでいます。「つながり」を大事にしてきました。
札幌市内で自然栽培の農業を営む ファーム伊達家 の伊達寛記さんと奥様の愛子さんにインタビュー。
「農村に住みたい」という気持ちからのスタート。さまざまな出会いを通じて自分たちの農業の柱が見つかりました。
―もともとは国家公務員で、辞めて2005年に農家になられたとのことですが、興味を持ったきっかけは
「農家に興味をもったきっかけは公務員時代に旭川への転勤で、そこで妻と結婚したのですが、周辺の富良野や美瑛にしょっちゅうキャンプや山登りに出かけていたんです。そうしているうちに『農村に住みたいなあ』と思うようになったんですよね。『農村には農業がある』という当たり前のことにも気づき、農業に興味を持っていきました。」
―農村に住みたいというところがスタートだったのですね。
「それから実際に農家さんに会ってみようと思い、『旭川市民農業大学』というところで学びました。農家が講師になって消費者が農業体験しにいくというような内容でした。そこで学んだことが、『農業は作る人と食べる人がつながって守るもの』ということだったんです。そのことが、今取り入れている仕組みCSA( Community Supported Agriculture:地域で支え合う農業:農家の収穫物の購入を年間で保証し、支える会員組織)にもつながってきます。その後、札幌に転勤になり、長沼でCSAを行っている『メノビレッジ長沼』の会員になりました。作る側と食べる側が直接つながる農業を、まずは『食べる側』で経験してみたいと思ったのです。それから公務員を辞めた後、メノビレッジで研修生として働き、『作って届ける側』も2年間経験しました。その後、札幌市内の山奥にある『トモエ幼稚園』との出会いもあり、札幌で農地を探すことに決め、豊滝の農地を借りることができました。トモエ幼稚園の木村仁園長による『自然にまさる教師なし』という言葉が印象深く、それも大自然に学ぶ自然栽培に生かされています。」
―素敵なご縁がたくさんあったのですね。ちなみに、もともと自然栽培をしようと思っていたのですか?
「はい。こどものころから私も妻も自然栽培や農薬が少ないものを食べていたという環境で育っていたので、自然栽培をしようというのは最初から思っていました。そして種を自家採種(自分の畑で種を採る)すること、そして、消費者の方と直接やりとりしたいとも思っていてCSAを取り入れようと。その3本柱でいこうと決めていました。今でもこの3本柱がファーム伊達家の特徴です。」
ファーム伊達家の特徴は、「自然栽培・自家採種・CSA」の3本柱
―そうなんですね。その3本柱について詳しくお聞きしたいと思います。まず、自然栽培は、難しいと聞くことも多いですが、実際どうなのでしょうか
「原理はシンプルです。太陽と水(月)と土(地球)の力で育てるので。ただ、人間が農薬や肥料で汚してしまった歴史があるので、その汚れを取り除かなければうまくいかないですね。それぞれの畑で汚れ方が違うので決まったやり方やマニュアルがあるわけではなく、それぞれの農家が考えて取り組まなければならないんですよね。『ノウハウ』という頭でやるとうまくいかないと思います。私たちの農地でも地道に取り組んできました。」
―次に、種を自家採種しているということですが、自家採種はどのような意味で重要なことなのでしょうか
「一般的に売られている種は、肥料や農薬を使う前提で作られている種が多いんです。種子消毒といって種に農薬がまぶされてあるものもあります。また、現在市販されている種の主流は交配種(F1・雑種一代)が多く、古くから作られている伝統的な固定種が少ないのです。」
―そうだったのですね!
「自然栽培では連作、つまり同じ場所で同じ種から採ることが基本です。種を自家採種することは、畑を自然の営みに調和したものにしていくために重要なことなんです。種採りを繰り返すことで、その土地になじみ、より力を発揮できるようになると言われています。ズッキーニなど10年以上続けている作物もたくさんありますよ。ファーム伊達家では、6割程度を自家採種し、それ以外は、古くから作られている固定種で、消毒されていないものを選んで使っています。」
―種からこだわり、手間や時間をかけて、より自然に調和するようにしているのですね。
「自然の本来のエネルギーを発揮させるために常に試行錯誤しています。それは子育てと同じなんですよね。子どもも種も本来育つ力を持っているから、いかに邪魔しないようにするかということなんです。トモエ幼稚園で子どもたちから学んだことが子育てにも農業にも生かされています。」
―なるほど。子育てと農業。確かに似ているかもしれませんね!
「子育てと農業は人類の二大事業ですからね笑」
―次は会員制の仕組みCSAについて教えてください。地域で支え合う農業ということでとても素敵な考え方ですよね。
「CSAは地域限定・会員制宅配の仕組みで、『旬の野菜セット』を会員さんに毎週お届けしています。直接手渡しすることがとても重要だと思っています。そこで会話が生まれて感想が聞ける。それをまた次につなげることができる。人に任せられないところですね。会員さんとの深いつながりができるところがとても魅力です。また、大量出荷はできないけれど、規格外でも受け止めて頂けるので無駄がなくロスが少ない仕組みです。もちろん規格外はできる限り減らしていく努力はしていますが。豊作のときも不作のときも大切に食べていただける会員さんに支えられています。」
―前払いの会費制ということで、農家も安心して仕事に専念できる、そして小さい規模の農家をみんなで守っていくことができる、不作などのリスクを共有し合える、などとても良い仕組みだと思います。
「ただ、1軒分ずつ袋詰めしてお届けしたり、会員を増やしたりなど手間やコストはかかるので、新規農家さんが敢えてやってみようというのは難しいかもしれません。それでも、農家と消費者とのつながり、農家や農地、地域の環境を守ることにつながるという考え方はもっと広まってほしいですね。」
会員さんと作ったズッキーニギフトボックスが大好評でした
―ファーム伊達家さんで採れる農産品を教えてください
「ズッキーニやかぼちゃを中心に、40種ほど生産しています。近年は豆類を増やしています。アイテム数は減らし、1種類あたりの生産量を増やしていきたいですね。ズッキーニは特に人気で会員さんから『こんなに美味しいズッキーニ食べたことない』と言って頂いております。昨年は、会員さん以外にも『ズッキーニギフトボックス(ミニブック付き)』を販売し好評でした。これもズッキーニが好きな会員さんからのアイディアや協力を得ながらできたものなんです。ミニブックのイラストやデザインは会員さんが心を込めて作ってくれました。」
―素敵ですね。会員さんの深い愛があるからこそできた一品ですね!!
―奥様に質問です。3人の子育てをしながら自然栽培の農業に取り組んできて、どうでしたか?
愛子「追われることが多くて大変でした。生活していくのに精いっぱいでしたね。やめたくなったこともあったけれども、人とのつながりが増えたことはとても良かったです。」
―現在は、CSAの配達業務を担っているということで、人とのつながりは更に広く深くなりそうですね。
―今後の目標や夢はありますか
「これまで会員さんとの関係を深めることを一番に考えてきましたが、それはもちろん変えず、今後は更に広めることもプラスしていこうと思います。昨年のズッキーニギフトボックスなどのギフトボックスシリーズ(かぼちゃ、お豆などがある)をもっと広めていけたらと思います。それが自然栽培や自家採種について知ってもらうきっかけになったらと思います。」
幸せとは
―お二人にとって幸せとは
寛記「五感で感じるものだと思います。だから感性を磨いていくことが大事なんじゃないかなと思います。他人の幸せを感じる感性も必要。押しつけはよくないですからね。」
愛子「家族そろって身体も心もすこやかになること」
ファーム伊達家
住所:札幌市南区豊滝435番地
電話・FAX:011-596-1507
E-mail:farm_date_family@yahoo.co.jp
Facebookページ:「ファーム伊達家」
※「旬の野菜セット」は毎年2~4月に会員を募集(札幌市内限定)
※「ズッキーニギフトボックス」は5月頃からお申込みを開始します。最新情報は上記facebookでご確認ください。
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